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2021.10.19

日本の美しい原風景「茅葺き屋根の再生」プロジェクト~秘められた多くのストーリー~

今回は、前回に引き続き鴨川市釜沼地区で行われている「KAYA PROJECT~茅葺の古民家を「現代の結」で再生し、茅文化を次世代に継承しよう~」についてフォーカスしていきます。

さて、一般社団法人「小さな地球」が中心となって動き出したこのプロジェクト。2021年秋にKAYA合宿やクラウドファンディングがスタートし、益々の盛り上がりを見せていますが、きっかけはどんなところにあったのでしょうか。

あの台風が気づかせてくれた

2019年に房総半島を襲った巨大な台風。房総半島を中心に甚大な被害を受けたことは記憶に新しいことでしょう。家々の屋根が吹き飛ばされ、電柱は折れ曲がりあちらこちらでライフラインが途絶えました。日々、ニュースやSNSでは衝撃的な光景が発信され、私たちの大切な場所が一夜にして豹変してしまったのです。
鴨川市の釜沼地域でも例外ではなく、甚大な被害を受けてしまいました。




当時の様子を林さんはこう語ります。

「凄まじい暴風雨の音が我が家を襲いました。まるで爆撃を受けているかのような。ガッシャーン、バリバリバリバリ…!!!!!物凄い音と共に、屋根を覆っていた、大きな大きなトタンが剥がれ落ちていきました。本当に恐ろしかった…。」




嵐が過ぎ去った後の翌朝、台風がいかに大型で、恐ろしいものだったのかは一瞬で気づくことができたそうです。と同時に、素晴らしい光景を目にすることになったのです。

なんと、それまであまり気にも留めていなかった茅葺き屋根が、トタンが剝がれ落ちてしまったことにより突然姿を現し、そして林さんに語り掛けてきたそうです。




「私(茅葺き屋根)が現れたことにより、ほら、気づいたでしょう。茅葺は美しい。日本は美しい。もう一度循環をつくろう。まだ間に合う。」

そのようなメッセージが、瞬時に聞こえてきたそうです。

かつての日本の農村部では茅葺き屋根の家が多く、ここ釜沼地区でも1980年くらいまでは茅葺き屋根の古民家が多く点在していました。しかしながら高度経済成長期真っ只中だった当時は、茅葺き屋根は古くさいものとして見捨てられ、低コストで高性能な住宅が求められるようになっていき、茅葺き屋根の家は次第にに減少していきました。その背景には、職人が急減してしまったこと、技術の伝承が上手くなされたかったこと、茅場が消滅していったことなど、多くの要因が挙げられます。

林さんの家は、茅葺き屋根の家ではあったのですが、昭和時代に良く使われるようになった「トタン」が茅の上にかぶされており、「それまで(台風が襲うまで)は、茅があることは知っていたけれど、茅のことをあまり意識していなかった」と言います。

ですから尚更、突然現れた茅葺き屋根の姿が印象的だったのでしょう。
想像してみてください。日頃見ている自宅の屋根から、突然、なんのアナウンスもなく茅が現れたら。
それはそれは、大変驚くに違いありませんし、はっとする何かを感じずにはいられないはず…林さんの語る姿からも、そう思いました。

「茅葺き屋根を再生したい」、直感で奮い立ち、発信を始めた

台風の翌朝林さんに語り掛けた茅葺き屋根は、林さんの心を大きく動かしました。直感的に「この茅葺屋根を再生させたい」と強く、そして切に思ったそうです。ただ、当時は台風後の被害が痛ましく、日々の暮らしもままならい状況。始めのうちの心境としては、SOSに近かったと言います。

そこで林さんは、SOSの気持ちや、茅葺き屋根を再生したいという気持ちをSNSを使って発信し始めました。
その発信に呼応するように、多くの方の助けや温かい声が届き、本当に本当に嬉しかったそうです。と同時に「人というものは、やさしさと愛を持ち合わせている。これらを集結させたら、大きな大きな力になるのでは」と思ったそうです。

ただ、茅葺き屋根の再生に関しては、「現実的に難しいのでは…」という声も多かったとか。上述したように、技術を始めとした茅葺き屋根を再生するための要素が、ほぼ失われつつあったためです。

ですが林さんは、発信をやめることなくひたすらし続けることによって、茅葺き屋根を再生したいという想いがカタチとして大きく動くことにもなりました。

「協力したい」と、手を挙げてくれた方との出会いです。

想いの意気投合が、やがて大きな原動力へ

この想いを発信してすぐに手を挙げてくれたのは、建築家アトリエ・ワン/東京工業大学教授の塚本由晴さん。東工大の学生を巻き込み、幾度となくこの地に通い続け、プロジェクトを一緒に練りに練ってきました。
途中、別のプロジェクトも並行しながらの活動。様々な活動を通して学生も一緒に、笑顔で参加している姿が印象的でした。

また、技術的面で大きな力を貸してくれることとなったのが、茅葺き職人の相良育弥さん。林さんの大きな発信がきっかけとなり、ご縁が生まれたとのことです。相良さんが初めて釜沼を訪れた際、この地区に広がる1200年の歴史を誇る棚田、そして林さんの古民家の茅葺き屋根を見て、素直に「力になりたい」と思ったそうです。この土地の美しさや人々が土地に向き合う姿を、心で感じてくれたということなのでしょう。



時が経つに連れて、このお二人のみならず気づけば多くの方々が賛同し、協力してくれていました。(※前編でお送りした記事もご参照ください。)

こうして、2019年9月の台風から2年、小さな地球プロジェクトの活動として、ようやく「KAYA PROJECT~茅葺の古民家を「現代の結」で再生し、茅文化を次世代に継承しよう~」 が本格的に動くことになりました。

奇跡の連続~茅葺き合宿&スクールがスタート~

ちょうど現在、茅葺き合宿&スクールが10月11日~スタートしており、林さんのSNSとその波動で集まった多くの参加者が日々茅葺屋根に向き合い、再生活動をしています。

「参加者の多くが、初めましての人なんです」と、林さん。
実は林さんのSNSを見た方はもちろん、投稿が「シェア」されてまた多く人の目に留まって…というように参加者が集まり、現代の「想いの波及」が実際に起きています。

茅葺き屋根に手を入れたら、「生きている」と感じた
茅葺き屋根は、本当に温かい、まるでトトロのよう
作業を手伝えない人は、順番に子供の世話をしたり、ご飯を作ったり


初めましての方々との集まりとは思えないほどの絆が生まれており、毎日感動しているとのこと。

「茅を一本むくだけで、人と時間と空間を超えて里山で対話する」
こんな瞬間を一緒に過ごせば過ごすほど、人々が心で通い合っていく姿が想像できますよね。



茅葺き職人の相良さんは、
「今まで様々なプロジェクトをやってきたけど、ここに集う方々は本当に興味があって、自ら手を挙げてここまで来てくれたんだ、とひしひしと実感しています。まさに林さんの想いに共感してきていただいている。だからこそ、みなさんのモチベーションがとても高く、そして関わる人の多様さに毎日歓心しています。是非、茅の新しいデザインを一緒になって作っていきたい」と語ります。



(※日々の様子は小さな地球メディアからご覧いただけます)

また、合宿に合わせて同時にクラウドファンディングもスタート。

「KAYA PROJECT~茅葺の古民家を「現代の結」で再生し、茅文化を次世代に継承しよう~」

「一人でも多くの方に、「現代の結」を感じて欲しい、色々な方の目に僕らの活動が目に留まって、意義を知ってもらいたい」そんな強い眼差しで語ってくださいました。



里山から生み出す、素敵なリターンの数々。人々が手をかけて、そして形にする素晴らしいものばかりです。
是非、一人でも多くの方がこのプロジェクトに賛同し、興味を持っていただけたたら嬉しいとのことです。

クラウドファンディング、そしてこの茅葺き屋根再生プロジェクトを通して、私たちの生きるフィールドを見つめ直してみてはいかがでしょうか。

台風に被災した茅葺きの古民家を「現代の結」で再生し、茅文化を次世代へ継承しよう!

小さな地球HP : https://small-earth.org/

小さな地球YouTubeチャンネル https://www.youtube.com/channel/UCjpGKLFXj3NvlYGDf7CEOSA

この記事のライター

Maocury(まおきゅりい)
Maocury(まおきゅりい)

安房地方(千葉県館山市)出身。大学進学とともに千葉市へ北上。卒業後は千葉市と安房地方の二拠点生活(デュアルライフ)をはじめ、今でも継続中。安房地方ではダブルダッチを通したストリートパフォーマンスの普及に力を入れ、現在千葉県ダブルダッチ協会の理事も務める。心の底から南房総を愛しており、生粋の房州人として地元のお祭りも参加。

2019年12月に安房にUターン。WEBライター、薬膳コーディネーターとしての活動など、「一度きりの人生を全力で」いろんなことにチャレンジ中。